保険を考えるとき、「もしものために、手厚いほうが安心」と感じるのは自然なことです。ただ、不安には上限がありません。不安の大きさを基準にすると、保障も保険料も際限なく増えてしまいます。
基準にしたいのは、安心という感情ではなく、万一のときに家計で不足する金額です。必要保障額がわかれば、残す保障と手放せる保障を落ち着いて選べます。
必要保障額は「遺された家族に必要なお金」から「公的保障・勤務先の保障・貯蓄」を引いて求めます。民間保険は、その差額を必要な期間だけ埋めるものです。
01 最初に「守りたい暮らし」を決める
数字を集める前に、何を守りたいのかを言葉にします。子どもが独立するまでの生活、住み続けたい家、最低限確保したい教育費。すべてを今と同じに保つのではなく、「ここは変えてもよい」「これは守りたい」を分ける作業です。
先に決めておきたい3つのこと
- 毎月の生活費を、現在の何割まで確保するか
- 教育費や住居費を、どこまで保障に含めるか
- 保障が必要なのは、いつまでか
02 必要なお金を、期間ごとに置く
次に、遺された家族に必要なお金を見積もります。日々の生活費だけでなく、住居費、教育費、葬儀などの一時費用も含めます。精密な予測より、前提を明記した概算で十分です。
必要保障額これから必要なお金入ってくるお金・今ある資産
生活費は「月額 × 必要な月数」で考えます。ただし、家族構成が変われば支出も変わるため、子どもの独立前と独立後など、期間を二つに分けると過大になりにくくなります。
03 すでにある保障を、先に数える
民間保険を検討する前に、公的保障と勤務先の制度を確認します。会社員など厚生年金の加入者には遺族厚生年金が加わる場合があり、勤務先によっては死亡退職金や弔慰金もあります。
- 公的保障
遺族基礎年金、遺族厚生年金など。加入状況と家族構成で変わります。
- 勤務先の保障
死亡退職金、弔慰金、団体保険。就業規則や福利厚生資料を確認します。
- 住まいの保障
住宅ローンの団体信用生命保険、家賃や住み替え後の住居費。
- 手元の資産
預貯金や換金できる資産。生活防衛資金をすべて使い切る前提にはしません。
公的保障の金額は、加入歴や家族構成によって異なります。日本年金機構の案内や年金事務所などで、自分の条件に沿って確認してください。
04 差額を、必要な期間だけ保険にする
必要なお金から、入ってくるお金と資産を引いた差額が、民間保険で備える候補です。子どもの成長とともに必要額が減るなら、保障額も同じ形で減っていくのが自然です。
死亡保障は一定期間の定期保険や収入保障保険、医療費は公的医療保険と貯蓄でどこまで受け止められるかを確認します。保険商品から考え始めず、目的と期間に合う仕組みを後から選びます。
05 見直すのは、人生が動いたとき
保険は毎月気にするものではありません。結婚、出産、住宅購入、転職、子どもの独立など、前提が変わったときに見直せば十分です。何も変わっていなければ、年に一度、保障内容と受取人だけを確かめます。
解約すると元に戻せない保険や、健康状態によって再加入が難しくなる場合があります。新しい保障の成立と条件を確認してから、既存契約を変更してください。
保険の役割は、不安をなくすことではありません。家計だけでは引き受けにくい、大きくてまれな損失を分け合うことです。数字で境界線を引けると、保険料を減らすことも、必要な保障を残すことも、どちらも穏やかな判断になります。
※本記事は家計を整理するための一般的な考え方です。公的保障・税制・保険商品の条件は個人ごとに異なります。契約の変更時は、公的機関や各契約の資料、必要に応じて専門家へご確認ください。
